2.13. エブリデイ ナイト モーニング

2/1(木)
こんなに頭がぼーっとするのはたった今テストが終わった解放感が全身の血管を拡張させて血液が一気に流れたせいで脳みそに行き届いてないからなのかそれとも単にきのう徹夜したからなのか、それともせっかく徹夜したのに大した成果も残せなかったうえ再試験になる可能性さえある結果だったからなのか。
今なら、九九も7の段くらいなら半分は間違えてしまいそうだななんて考えながら帰る。いつもの友達たちと、いつものように、いつもの定食屋さんに集合しいつものようにテストがダメだったとか、明日の授業はどうだとか週末はどこに行く予定だとか明日は雪だとか、ホッカホカのあっつあつのカツ丼に七味をかけてあったかいお茶で流し込んだ僕たちはそれぞれの帰路につく。午後1時28分。

あれ。もう暗い。
真っ暗な部屋はお昼のままの姿で僕を見つめる。カツ丼にエネルギーを吸い取られた僕はそのまま寝てしまったみたいだった。
適当につけたテレビから流れるバラエティではいつもように芸人たちが熱いお湯にリアクションしたりそんな面白いこと現実で起こるかよ、みたいはトークを繰り広げたりしていた。しかも宅配ピザはついに20分で届くようになったらしい。家かよ。朝飯作るだけでももっとかかんぞ。テレビから離れてキッチンに立つ。水道から直接注いだ水の温度がコップの壁を通して手に伝わる。つめてー。冬の寒さが染み込んだその水が一気に喉を通る時、僕は確かに生きていた。

 

2/2(金)
酒、タバコ、女。身を崩しかねない。やばい。
でももっとやばい。ずる休み。やばい。やめられない。
小学生の頃初めて、特に感じてなかった腹痛を理由に早退したあの瞬間から僕はずる休み中毒なのかもしれない。まず名前がやばい。ずる休み。他の誰かにとってはずるい理由で休む。しかもそれがずるいということは休むこと自体は特に批難の対象ではないという状況。ずる休み。ただ、今は、ただ勝手に休むことをずる休みと自分で言ってるだけであり、これは普通に休んでるだけなんですけどね。失敬失敬。ずるくないです。普通の休み。ふつ休み。いや、休みというかサボり。普通のサボり。ふつサボり。

金曜日なので彼女と2人で贔屓にしている居酒屋さんに足を伸ばします。
彼女と2人で居心地のいいお店で大好きな日本酒とかビールとか、それにお刺身とかちょっとした揚げ物とかあったりするともうはっはっはーってなりますよね。はっはっはー。
隣でウーロン茶を飲みながら会社の愚痴や今週大変だったことをひとしきり話せばすっかり話すのに疲れてしまった様子で、一転して僕の話をうんうんと聞いてくれる彼女は甘辛く煮付けられたメバルをつつきながら、次に頼むものを探すためにメニューを旅していた。終わりなき旅。幸せの旅。

 

2/3(土)
バスに乗ろうと目標を立ててスーパーに行く。
バスは楽しい。窓がでかいから。みんなより少し高い位置で街を進むことができるから。大きな箱に乗って揺られて進む。
信号で歩みを止めたその箱はいつもは見えない街の息づかいを見せてくれる。隣で停車したワンボックスの中でおじさんも外を眺めている。一歩立ち止まって、今自分のいる道を確認して、また一歩踏み出して。

一緒に暮らし始めたあの頃はスーパーでの買い物も苦手で、いらないものといるものの区別もできない僕らは伸びすぎたレシートに苦笑いしながら、でもそれがやけに嬉しかったり。今はずっとずっと短くなったレシートもレシート箱には捨てられず、こっそりポケットに忍ばせる。理由なんてないけど。
帰りのバスはまた220円。でもあの頃よりずっとレシートが短いから、バス代2人分なんてまだまだ余裕だ。